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2015年01月06日

戦前のお正月。お餅の話。「水餅」の作り方と食べ方。

2014.01.06.

戦前のお正月。お餅の話。お餅の話。
「水餅」の作り方と食べ方。



今日もお餅のお話をいたしましょう。


わたくし八十路小町が子供の頃、
つまり戦前のお話ですよ。


当時のわたくしは本家に養女に行っていましたが、
本家でお餅を搗くときには、
新宅の家族も全員集まって、
早朝から夜遅くまでかかってお餅を搗きました


お鏡餅を作って、
後は丸餅とのし餅を作ります。



室蓋に流し込んだのし餅は、
おかきやあられになります


一方、丸餅は
新しい稲藁で織った新筵を座敷や次の間にまで広げて、
そこに綺麗に並べていきました。


それを次の次の日になると、
1枚1枚ひっくり返しては乾かすのです。


そして、
乾いたお餅は「水餅」にします。








「水餅」というのは、
水の入った大きな樽にお餅を浸して保存する方法です。


今のように真空パックもなければ、
冷蔵庫も冷凍庫も普及していませんでしたから、
食品の保存には昔ながらの智恵を使ったのです。


お餅はご飯よりは水分が少なく、
しかも搗き固められているので、空気の含有量も少ないとはいえ、
炭水化物の塊ですから、
黴が着きやすいのです。


それを防ぐために考えだされたのが、
水の中に漬けて、
黴の胞子の漂う空気から遮断するという方法です。



といっても、
お餅の数が物凄いものですから、
大きな五斗樽を水餅専用にしていました。








樽というものは
何枚かの木の板を組み合わせて作ったものですね。


板は水を吸うと膨張して隙間がなくなるのですが、
使わなくなってしばらくすると、
板が乾燥して隙間が出来てしまいます。


また、
樽というものは内側から大きな圧力がかかるので、
板同士を締めつけるのに使う「箍」がどうしても緩んでくるのです。



そんな状態の樽では、
液体を入れたら、板の隙間から漏ってしまいますね。




それで、
年末が近づいてくると、
樽屋さんが家々を回って箍を直してくれます。


出張の樽職人というところですね。









今では「樽屋」なんてお店は見かけませんが、
昔はどこの村にもあったものです。


というのも、
お味噌も醤油も自家製でしたからね、
他にも樽や桶など、
そういった道具は必需品で、
しかも、それを使い捨てるのではなくて、
何代にも渡って修繕しながら、
大事に使うからなのですよ。







さて、
そうやって、
文字通り水も漏らさぬように万全の体制で待ち構える樽に、
乾いたお餅をひとつひとつ丁寧に詰め込みます。



そして、
水を静かに注いで、
お餅をすっかり水に沈めるのです。



この辺りは豊富な湧き水で有名な土地なので、
いつでも新鮮で美味しい水が飲めるし、
それで作る料理も本当に美味しいのです。


でも、
いくら新鮮で美味しい水でも、
ときどき新しい水に替えるのを忘れると、
お餅に黴が生えて大変なことになりますよ。







そうやって、
保存してある水餅は
これからの時期の美味しいおやつになるのです。






今日は暦の上では「小寒」。


初春の季語に「麦踏」があるように、
農家ではこれからが麦踏みの季節になりますね。


大人たちは朝早くから畑に行きます。


その間に家に残っている者は温かいお昼ごはんの準備をします。


お昼ごはんに帰ってきた大人たちは
沢山食べて少し横になってから、
また麦畑に帰っていきます。


すると、
家に残った子どもや老人は今度はおやつ作りに励みます。







まず用意するのは、大きな焙烙です。


これは土で出来た素焼きのお盆のようなもので、
直径が50cmほどもある大きなものです。


大きな竃にかけて使いますからね、
お寺の「焙烙灸」などのようなものでは小さすぎてお話にならないのです。



その焙烙を竃に置いて、
塩を振ります。


そして、
樽から取り出した水餅を並べていくのです。


そうですね、
20個はありましたね。



焙烙は土ですから、
熱の当たりが柔らかなので、
お餅もこんがりと、本当に美味しく焼けるのです。










焼きあがったお餅は、
食べる人それぞれの好みによって、
安倍川にしたり、砂糖醤油にしたり、
出かける前に受けた注文どおりに仕上げます。


それを冷めないように布でしっかり包んで,
小走りで畑に届けるのです。


年が明けて、いくら「新春」などといっても、
暦の上では「小寒」「大寒」と続きますから、
本当に寒いですね。


畦道は山からの吹き下ろしで凍えそうになりますが、
胸に抱えたお餅はほんのりと暖かく、
嬉しいお使いなのです。







畑では大人たちが集まってきておやつの時間です。


温かいお餅を食べながら、
しばし談笑の時間でもあります。


また、
若いお母さんは赤ん坊にお乳を含ませます。


今のようになんでも機械でできるわけではありませんから、
老若男女、働くひとは沢山食べないと力が出ないので、
おやつは絶対に欠かせないのです。









さて、
帰り道は温かいお餅こそ抱えてはいませんが、
それを受け取った大人たちの笑顔で更に心も暖かく、
スキップするように帰宅したのを覚えていますよ。







こうして食べた「水餅」も、
大きな樽にいっぱいあったのに、
沢山食べますから、ひと月ほどでなくなってきます。


でも、大丈夫。


なぜって、
そのころには「旧正月」が来るからです。


旧正月にもお餅を搗きます。



年末に搗いたほどの量の半分くらいしか搗きませんが、
美味しく便利な保存食なので、
また結構な量を搗くのです。



この頃になると、
もう暦の上でも春ですからね、
「水餅」で保存するには暖か過ぎるようになってきます。



そういった意味でも、
搗く量が少なくなるのですね。







ああ、
なんだかわたくしも懐かしい安倍川餅が食べたくなってきましたよ。



今日のおやつに、
夫に提案してみましょうか。





ではまた、ごきげんよう。。。







posted by 八十路小町 at 06:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 昔のお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
興味深く読ませていただきました。
昨日、醍醐寺の餅上げのお裾分け?お下がり?をいただき、
水餅の話が出てネットで調べておりましたら、たどり着きました。
楽しくイキイキと語られていて、最後まで楽しく拝読いたしました。
一言お礼を申し上げたく、コメントさせていただきました。
Posted by 丸山 健生 at 2019年02月27日 12:25
丸山 健生さん、嬉しいコメントをありがとうございました。
迂闊にも気づかず、お返事が大変遅れてしまって、本当に申し訳ありませんでした。

醍醐寺の餅上げについて、さっそくネットで調べました。
YouTubeで見つけて、一緒に持ち上げたつもりで、うんうん唸りました。
楽しい情報をどうもありがとうございました。

力持ちの持ち上げた有難いお餅を召し上がって、今年も皆様お元気でよい年になりますよう、お祈り申しております。
Posted by 八十路小町 at 2019年04月15日 07:10
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