お爺さんとお婆さんが鶏の手術をしたのですが・・・。
「鶏」の俳句。
もうすぐ2017年、酉年も終わりですね。
そして、毎月28日は「にわとりの日」ということで、
今日は鶏についての忘れられない思い出を書きましょう。
あれはもう半世紀以上も前のことでした。
わたくしがすぐ近くの万屋に買い物に行こうとして、
玄関を出たところ、
すぐ隣の家でなにやら賑やかな声が聞こえてくるのです。
ここは村の鍛冶屋で、
ご隠居のお爺さんとお婆さんの喧嘩のようです。
二人は近所でも有名な夫婦で、
しょっちゅう派手な喧嘩を繰り広げるのですが、
それでも本当は仲良しなのでしょう、
いつも一緒にくっついているのです。
庭先を覗いてみると、
鶏小屋のすぐ前で、お爺さんとお婆さんが鶏を一羽捕まえて、
何やら言い合っています。
お婆さんの説明では、
鶏が餌を食べていて、その中に入っていた魚の骨を飲み込んでしまったというのです。
よく見れば、
鶏は目を白黒させながら、ヒクヒク言っています。
お婆さんが鶏を触診したところでは、
お腹に尖ったものが触れるので、
内臓に骨が突き刺さってしまって、
にっちもさっちも行かない状態だということです。
そこで、お婆さんは手術をして、
鶏を助けてやろうというわけです。
道具は剃刀と木綿針と木綿糸です。
ギャアギャア騒ぐ鶏を捕まえて、
地面にねじ伏せて、
暴れないように押さえつけておくのは、
助手たるお爺さんの役目です。
ところが、
いざとなると腰が引けてしまうのが男の性とでもいうのか、
お爺さんは怖気づいて、目を逸してしまっています。
それをお婆さんが叱咤激励するのです。
「お爺さん、何をやっとるんじゃ。
しっかり持っておらんと!!」
いくら鶏とはいえ、
麻酔もなしにいきなり手術をするというのですから、
鶏が騒がないわけがありません。
必死に大声を上げて、
必死に逃げようとします。
それを大男のお爺さんが押さえるのですが、
どうにも上手くいかず、
小柄なお婆さんに叱られているのです。
お婆さんは鶏の腹の羽根をむしり取って、
皮膚を露出させ、
そこをメス代わりの剃刀で、真一文字に切開します。
お爺さんとお婆さんは「ああでもない」「こうでもない」と、
いちいち、大声で喧嘩しながらの手術です。
内臓を探って、
魚の骨のありかを突き止めて取り出し、
黒い木綿糸でキリキリと縫い上げて、
無事に手術は終了しました。
お爺さんが手を離すと、
鶏は何事もなかったかのように立ち上がって、
コッコと鳴きながら歩いていきました。
そして、
さっそく餌を啄み、水を飲んでいるのですから、
いやはや、お婆さんの手腕には驚いてしまいました。
さて、
その鶏は次の日も元気に餌を食べ、
その次の日も元気に餌を食べ、
その次の日には鶏を買う人に連れられて行ってしまいました。
当時は、どこの家でも鶏を飼っていて、
卵を産ませて食べていました。
卵を産まなくなった鶏はというと、
自分の家で絞めて食べることもありましたが、
大抵はそういう可哀想なことは出来ないので、
廃鶏収集業者に買い取ってもらっていたのです。
いわゆる「鶏買い」の人は自転車の荷台に木のりんご箱を積んでいました。
りんご箱には窓があって、金網が張ってあります。
業者は家々を回っては、
そこに買い取った鶏を押し込んで行くのです。
さあ、
その頻度は年に一回か二回くらいだったでしょうか?
そう言えば、あの光景は年末だったように思います。
お爺さんとお婆さんが半纏を着ていて、
その背中が日向の陽をいっぱいに浴びて、
中の綿がふんわり膨れ上がっていたからです。
庭の一番日当たりの良い場所で、
お爺さんとお婆さんがしゃがみこんで、
頭と頭をぴったりとくっつけあって、
それであれこれと言い合って喧嘩しているのです。
結局は、「お爺さん、しっかりせんか!」なんて、
お爺さんが一回りも年下のお婆さんにとっちめられてしまうのですから、
失礼ながらも面白くて、
わたくしもついつい最後まで見届けてしまったという次第でございます。
あら、
そう言えば、わたくしたちもあのお爺さんやお婆さんの年齢に近づいてきましたよ。
あの鍛冶屋のご隠居さんのお爺さんとお婆さんは、
あの世でもきっと仲良く喧嘩をしていることでしょうね。
では、「鶏」の俳句をどうぞ。
鶏の俳句。1
https://youtu.be/HOj3wKCCAow
おおひでり鶏がついばむ父の影
奥山甲子男
みの虫をついばむ鶏や燦として
飯田蛇笏
新米のこぼれし庭や鶏の群れ
正岡子規
鶏(とり)たちにカンナは見えぬかもしれぬ
渡辺白泉
鶏小屋は空金網冬陽を囲う
中井不二男
シューマンの流るる鶏舎夏立てり
山本文子
蛙鳴き鶏なき東しらみけり
小林一茶
脇腹に鶏を抱へてゆく九月
柿本多映
そうそう、
鶏買いさんは廃鶏を買い取ると、
注文を聞いて、ひよこを届けてくれました。
戦時中には、
家庭で兎を買うのも推奨されましたが、
それも同様に業者が回ってきたものです。
兎の話は夫の方が詳しいようですから、
また聞いておきますね。
ではまた、ごきげんよう。。。
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