7月12日は「山下清」没後45年。
入院中にファンになりました。
「花火」の俳句。
今日は7月12日、
あの「裸の大将」山下清が亡くなって45年になります。
山下清といえば、
素朴な味わいのある緻密なちぎり絵で有名ですね。
あの独特な画風は
山下清に知的な障害があった故と言われていますが、
その障害は生まれつきのものではないそうです。
浅草で生まれた翌年の関東大震災で非難した先の新潟県で、
3歳の頃に重い消化不良で命を落としそうになって、
そのせいで軽い言語障害、知的障害の後遺症を患うことになったのです。
お父さんが亡くなって、
お母さんが再婚したものの、
その生活は不幸で、
お母さんは清を含む3人の子供を連れて家を出て、
以後、大変な苦労をしました。
知的な障害のある清は普通の学校の生活についていけず、
千葉県東葛飾郡八幡町大字八幡字衣川(現: 千葉県市川市八幡四丁目)の知的障害児施設「八幡学園」へ預けられ、
ここで「ちぎり紙細工」に出会います。
そのちぎり絵での才能を見出したのは、
学園の顧問医を勤めていた精神病理学者・式場隆三郎で、
そのお陰で、
山下清の天才が花開いたというわけですね。
![]() 山下清作品集 [ 山下清 ] |
さて、
山下清はリュックを背負って日本中を放浪し、
その旅で見聞きしたことを作品に残しました。
独特な風貌、言動から「裸の大将」と呼ばれ、
芦屋雁之助らがテレビなどで演じて、
さらに有名になりました。
その山下清の放浪記が本になっています。
わたくしは昨年の入院生活で、
ピヨ子が持ってきてくれた本を何冊も読んだのですが、
最も印象に残ったもののひとつが山下清の書いたものです。
「日本ぶらりぶらり」
「ヨーロッパぶらりぶらり」
どちらも本当に面白かったです。
日本やヨーロッパを旅した途中で見たり聞いたりしたこと、
そして感じたことなどを、
味のあるスケッチとともに綴っています。
知的障害を持っているために、
会う人会う人に馬鹿にされ、
悔しく悲しい思いをしながらも、
誰かを恨むこともなく無心に生きている姿に、
ときにはほろりと涙がこぼれてもきました。
![]() 山下清 山下清放浪日記 |
式場隆三郎に連れて行ってもらった外国旅行で、
コペンハーゲンの人魚像を見ながら
「みにくいあひる」の話をする場面があります。
白鳥の子はこどものときは醜いからと嫌われてひとりぼっちでいて、
大人になって綺麗になったらなったで、
みんなに羨ましがられはしても、
やっぱりひとりぼっち。
今更白鳥の仲間に入るのも、
勝手が違っていろいろと都合の悪いことが多いので、
あひるのこはあひるのままでいた方が良かったのではないか。
そんな風に清は思ったのです。
「アンデルセンは、おとぎばなしだからあひるの子を白鳥にしたんだな。ほんとの話をかくと子供がよろこばないのかな」
というと、
「人間はどんな不幸なときでも、さきにしあわせが待っているかもしれないと思うと、元気がでてくる。アンデルセンは人間にいい夢をつくってくれた」
と先生がいうので
「いい夢でもわるい夢でも、夢は夢だな。さめればおんなじだ」
「清はしあわせになりたいと思ったことはないのかな」
「しあわせになれるかどうか、さきのことはわからないな。ぼくはしあわせでも不しあわせでもなくて、いつもふつうだな」
というと、だんだん日がくれてきて、人魚の像もただの黒いかげみたいになってしまったので、町へ帰って洋食をたべて、宿屋に帰ってねたが、夢はみなかった。
引用:「ヨーロッパぶらりぶらり」
清は知恵遅れなので、
いわゆる常識というものを知らないし、
一般の知識にも欠けるので、
とんちんかんなことばかり言ったりしたりします。
でも、
わたくしは清の本を読んでみて、
本当に頭がいいのは清の方ではないかしらとさえ、
思うようになってきました。
長く生きてくると、
自分も周囲の状況も変わってくるので、
正しいと信じてきたことが、
どうもそうではなかったと分かったり、
価値があるとやみくもに信じてきたことが、
実はどうでもよいことだったり。
直腸脱の手術を終えて、
お尻の痛みに悩みながら出会った山下清のことを、
わたくしは決して忘れないでしょう。
1971年(昭和46年)7月10日の夜、
脳出血で倒れ、
12日に49歳で亡くなりました。
最後の言葉は
「ことしの花火見物はどこへ行こうかな」
だったそうです。
そんな山下清に「花火」の俳句を手向けたいと思います。
花火やむあとは露けき夜也けり
正岡子規
花火があがる音のたび聞いてゐる
尾崎放哉
群集の顎吊り上げし花火かな
仲畑貴志
子が持てば火花よろこぶ花火かな
鷹羽狩行
子に土産なく手花火の路地を過ぐ
大串章
寝たきりの友よ見給へ遠花火
河合しよう
遠花火戸口に杖と立つて居り
村越化石
絵手紙の空を食みだす大花火
水原春郎
魂の半分は鬼花火散る
坪内稔典
一輪の花となりたる揚花火
山口誓子
ヨーロッパ旅行の終わりに、
飛行機の窓から外を見て、
暗い空のはじの方がぼうっと明るくなっていた。
あの下に東京があって、お母さんや辰ちゃんや辰ちゃんの子供がいて、
・・・
家が小さくて屋根がきたなくとも、千万人の人がみんな日本語で話をしているので、ぼくは自分が日本語をしゃべれるのが大したことのような気がした。
・・・
東京の灯はぬれているようにひかっている、東京の夜空はしっぽりとしめっぽかった。
ぼくは珍らしいヨーロッパやアフリカなどをみておもしろかったが、やっぱり日本がいちばん住みよいことがわかった。
(おわり)
引用:「ヨーロッパぶらりぶらり」
今日は裸の大将に出てくるシーンのように、
大き目のおむすびを作ってみようかしら。
こんな蒸し暑い日でも、
塩をきかせたおむすびなら食欲が湧いてきますね。
ではまた、ごきげんよう。。。
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